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=== 外来魚バスターズ 駆除活動報告 ===
通算駆除重量15トン突破! 2006年外来魚バスターズ活動の記録
 2006年の12月10日、外来魚バスターズによるブラックバス・ブルーギルの駆除重量が結成以来の通算15トンを突破しました。私たちは2001年の結成以来、月2回の定例駆除とメンバー各自の休暇や仕事の合間を利用した個人駆除を継続し、この成果にたどり着きました。定例駆除は雪の降る中も台風の時も、一度も休むことなく行なわれてきました。ここでは、私たち外来魚バスターズの2006年の活動の様子をお伝えします。

  第一部 2006年駆除活動
  第二部 2006年研究活動


■ 第一部 2006年駆除活動
◆ 湖東北部冬の陣 〜年間1トン突破

 2005年の外来魚バスターズの駆除活動は大晦日の個人駆除にて終了。この時点での通算駆除重量は12174kg。ここ数年、年間に3〜4トンの駆除を達成しているので、2006年中での15トン達成が期待されます。
例年、メンバーの個人駆除は正月から行なわれています。2006年も1月2日の個人駆除を皮切りに、バスターズの駆除活動は始まりました。1月から3月にかけては、湖東北部の水路で定例駆除を行いました。ここは温排水の影響で多くのバスギルが集まって来るので、効率的な駆除が望めます。1回の定例駆除でおよそ1000〜2000尾、150kg前後のバス・ギルを駆除し、3月12日には年間累計1トンを突破しました。

 2005年の1月から3月の定例駆除で釣れたバスの平均重量はおよそ120gありました。これは20cm以上のバスが平均して釣れていることを意味しますが、今年は同時期の平均重量が100gを下回りました。3月になると産卵をひかえたお腹の大きな30cm以上のバスが入ってきますので、2月までに限ると平均重量75g程度、多くが20cm未満の小バスで、1匹あたりの重量はギルの方が重いくらいです。2005年は1〜2月の平均でも120gありましたので、 2004年の冬から始めた集中的な駆除によりサイズの大きなバスが減少しているのは明らかです。これまで、ひとつのポイントでの「冬季における中型バスの大量駆除」→「中型の減少と小バスの大量駆除」という現象は、湖西北部のポイントでも観察されてきました(図1)。やがて、湖西北部のポイントで小バスさえも釣れなくなったことを確認した2004年の冬、新たな駆除拠点を求めてバスターズは湖東北部へ進出してきたのです。



 あれから2年。ここ湖東北部のポイントは、サイズは小さくなったとは言えまだ2ヶ月余りで1トンもの外来魚が釣れる状態にあり、その異常な環境を求めて多数のバサーが集まってきています。琵琶湖全体から見るとごく狭いこの水路にひしめくバスはたいへん飢えた状態にあり、この時期にはバサーの投げるルアー仕掛けにも喰いついて来るようです。しかし、付近に設置された駆除ボックスにはほとんど魚が入っていません。琵琶湖では条例によりリリースが禁じられているにも関わらず、多くのバサーはいまだにリリースし続けているのです。中には、私たちの存在を意識して、「釣ったら絶対リリース!」と叫ぶ者さえいます。このように悪意を持ってリリースするバサーは小数派かもしれません。ただ釣りたい、釣った魚を殺したくない、だからリリースする。しかしそんな気持ちさえ、他人によって作られ無意識のうちに刷り込まれたものであることに気づかねばなりません。そもそもバス釣りとは、豊かな自然があって初めて成立する「本来の釣り」とはまったく異なる、日本の自然を食い物に利益をあげる商業システムなのです。釣り業者はバサーによる無責任な放流を見過ごすだけでなく、時には自ら密放流を行ってきたと言われます。バス釣りの利権を庇護する政治家達、ファッションとしてバス釣りを宣伝するマスコミ、バスの害魚としての特性を否定し曲解した生物多様性保全の考えを放言する学者。これらの一部勢力に擁護され、バスとバス釣りは拡大し、その過程で膨大な在来生物が犠牲になってきました。これがカルトにも似たバス釣りの実体なのです。キャッチ&リリースというバス釣りのルールは、ブラックバスの原産国であるアメリカにおいては存在意義を持ちます。しかし、日本においては、バス釣りの利権を守るために利用されているに過ぎません。私たちは駆除を続ける中で、リリースをやめるよう何度もバサーに語りかけてきました。中には駆除に協力するバサーもいましたが、リリースをやめない者が大半です。「罰則のない条例なので無視すればよい」と教唆する学者さえいるとのこと。こんな現状では、バス釣りそのものをなくしてしまう他に仕方がありません。バス釣りの冬季の人気スポットであるこの水路で、小バスさえも釣れなくなりバス釣り場としての存在価値がなくなるその日まで、何年かかろうともバスターズは駆除を続けます。


◆ 春の産卵期大型バス駆除 〜年間2トン突破
 南北に長い琵琶湖では、同じ時期でも北部と南部では水の中の様子は大きく異なります。2月末には南湖の岸近くに産卵を控えた大型のバスが近寄ってきていました。そこで、個人駆除では偵察をかねて南湖での産卵期大型個体の駆除を開始しました。数は少ないものの1回の出撃で40cm〜50cm級の大型バスを必ず仕留め、4月6日には2尾のロクマルが今年はじめて駆除されました。しかしこの時期、大型が釣れるのは夕方遅くの時合いに限られていました。今年は桜の開花なども例年より遅れていましたが、水の中でも半月ほど季節の進みが遅いようです。まだ産卵大型は「走り」の時期であると判断し、4月の定例駆除は湖東北部と南湖にメンバーを分散する形態で行いました。

 湖東北部の水路ではこれまでの小バス主体から、徐々に30cm級の中型が多く混じるようになります。しかしその勢いも4月下旬には衰えはじめ、かわって南湖の漁港では大型バスの‘乗っ込み’(産卵のために浅場に移動してくること)が本格化します。そこで定例駆除の拠点を南湖に移し、産卵期大型個体の駆除に集中しました。複数のポイントにメンバーが分散して駆除することによって、ロクマルを含む40cm以上の産卵期大型バスが30尾以上駆除された日もありました。季節の進行にあわせ拠点をやや北へと移しつつ、産卵期大型個体の駆除を続け、6月11日には年間累計2トンを突破しました。

 この頃、湖東北部の漁港にも大型個体が産卵のために接岸、主に滋賀在住メンバーの精力的な個人駆除により40cm〜50cm級の大型バスが次々に駆除されていきます。その結果、今年に入って6月末までに駆除された大型バスは40cm級210尾、50cm級61尾、60cm級6尾となりました。

 2003年の春にバスターズが産卵期大型バスの駆除に取り組み始めたときには、最大68.4cmを筆頭に60cm級5尾、50cm級20尾が一日で駆除されることがありました。これはひとつの漁港内での、釣りを始めて間もないメンバーを含むわずか4人での成果です。タックルも今から比べると洗練されたものではありませんでした。現在では、メンバー各自の経験の蓄積による釣り技術の向上、タックルの重装化とTPOに応じた浮きの開発などにより、大型個体の駆除効率は格段に上がっています。にもかかわらず、 2003年ほど大量の超大型が一時に釣れることはもはやありません。南湖の各ポイントでは、3年間に及ぶ集中的な駆除により大型個体が減少しているのは明らかです。琵琶湖では、ブラックバスが30cmにまで成長するのに4、5年かかると言われます。バスは短期間に長距離を移動しないと考えられていますので、同じ場所で一定期間集中して釣獲すれば、周辺水域での大型個体を減らせることを、私たちの駆除結果は示しています。


◆ 試練の夏 〜産卵期ブルーギルの駆除と在来魚の復活
 真夏は、中〜大型のバスが湖の深場へと移動するために、漁港を中心としたバスターズの駆除では唯一効率の下がる試練の季節です。夏の南湖では例年、ブルーギルが多く釣れます。今年も日によってバスを上回る数のギルが駆除されますが、昨年までと比べて型が小さくなっていて、20cmを超える大型個体は少なくなっているように思えます。

 今年の夏には、ギルにさらに打撃を与えるべく、ギルの産卵床を探索し、新たな駆除方式を試行しました。あるポイントでは湖底に無数のブルーギルの産卵床が並び、まるでゴルフボールの表面のようです。産卵床には卵を守る大型の雄の姿が見えました。この雄は深刻な飢餓状態にあるようで、いつものようにシラサエビを付けた仕掛けを投入すると、すぐに食いついて釣り上げられてしまいます。そうすると、周囲に群れを成す小型のギルが主を失った産卵床に殺到し、卵を食べてしまいます。こうしてメンバーがギルを次々に釣り上げることによって、産卵床は簡単に粉砕されていきました。これは、ブルーギルがたいへん卵を好み同種の卵でも食べてしまう習性を利用して、親魚の駆除と膨大な卵を同時に駆除できるたいへん効果的な駆除方式と考えられます。

 暑さ衰えぬ名ばかりの処暑、定例駆除の参加者が5名程度というさらに厳しい状況が続く中、拠点を南湖から湖西中部へと移し、50kg前後の駆除量を維持します。これはメンバーひとりひとりの技量が高くなっているからに他なりません。
バスターズが4年を掛けて駆除を行なっている湖西中部のポイントでは、バス・ギルのサイズは確実に小さくなっていました。それにともない、ケタバス、オイカワ、ビワヒガイ、カマツカ、ヨシノボリ、ギンブナ、ゲンゴロウブナと、これまでになく多くの数と種類の在来魚を確認できました。大型魚を多数駆除したことによってバス・ギルの制圧力は弱体化しているようです。30cmを越えるケタバスが、小型のバスを追いまわしています。オイカワの群れは、体長15cmに満たないバスを無視してその近くをゆうゆうと泳いでいます。カマツカも、近寄ってくる小バスを全く無視。小型のバスは在来魚が自分と同程度かそれより大きいと、興味は示しても手も足も出ない様子でした。このような様子は、かつての駆除拠点であった湖西北部でも観察されており、駆除の効果の現われと考えられます

◆ 秋から冬へ 〜通算15トン達成
 駆除の実践を最優先に活動する私たちは、議論や啓発活動を中心とする他団体と連携することは滅多にないのですが、滋賀県主催の駆除大会には参加協力しています。これは日頃から駆除した外来魚の回収でお世話になっていることへの感謝とお礼を込めてのことです。以前は駆除した外来魚をメンバーが持ち帰り畑に埋めるなど、釣り上げた外来魚の処分にも時間や労力を割かねばなりませんでしたが、駆除ボックスの設置により駆除そのものに集中できるようになりました。今年も滋賀県主催の外来魚ノーリリース釣り大会に定例駆除の日程を変更しての参加です。9時からの開会を待たず、7時すぎには駆除を開始。前日に湖が荒れていた影響で、外来魚は漁港内に多く集まっていました。バスは時折25〜30cmほどの個体が混じるものの10〜20cmのサイズが主で、対してギルは、数は少ないものの15〜20cmの良い型がみられました。大会全体での駆除成果は33kg、そのうちバスターズの7名に愛知から昨年も参加し私たちと一緒に駆除した2名の青年を加えた釣果は522尾24.0kg。さわやかな秋晴れに恵まれた美しい湖北の風景の中での駆除でした。企画・運営に当られました滋賀県当局の皆様、お疲れ様でした。なお、コクチバスを見ることはありませんでした。

 ようやく涼しさを感じるようになった11月。昨年からこの時期には湖東北部の漁港で駆除しています。冬期のバスの溜まり場となる水路への入り口になっているこのポイントで、冬越しのために集まってくるバス・ギルを迎え撃つ作戦です。しかしこの場所は風の影響をまともに受けるのが難点。数日前には木枯らし1号が吹き荒れ、この日も冬型の気圧配置。現場に着くといやな予感は的中。この強風では釣りにならないと判断し、水路のポイントへ移動します。水路にはまだオオカナダモがびっしりと茂っており、水は澄んでいて水量少なめ。これで釣れるのだろうかと思いつつ準備をしていると、水に落とした餌の付いていない仕掛けが動きます。引っ張りあげるとバスが掛かっていました。どうやら藻の中にはたくさんのバス・ギルがおり、たいへん飢えているようです。向かいの運動公園ではシティマラソンの開会式の真っ最中。と、聞き覚えのあるあの大声、「キアイだぁー!オイ、オイ、オィー!」。ゲストに来ていたんですね、生では始めて聞きました。この気合に乗せられたのか、バス・ギルの喰いは絶好調、終日入れ喰いでした。サイズは全体的に小型で重量は59.5kgに留まりましたが数は多く1151尾。ここでは一人あたり200尾は駆除できる、ということで、これが次回からの努力目標となりました。

 11月24日の東京新聞朝刊に、「必殺!釣り人が駆除」という見出しでバスターズの駆除活動が紹介されました。これは外来魚の生態系への影響のみならず、その原因となった違法な「密放流」、その背後にいる釣り業界などの存在にまで踏み込み、バサーや業界勢力と対立しながら駆除を続けてきたバスターズの理念を説く良い記事になっています。この記事をきっかけとして、テレビ局の取材が続くことになります。この模様は11月27日にテレビ朝日系列「ワイド!スクランブル」、12月3日にTBS系列「ブロードキャスター」、12月12日に日本テレビ系列「スッキリ!!」で相次いで放映されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。取材は放映日直前の定例駆除の模様が中心でしたが、平日の取材を希望したテレビ局もあり、これには急遽仕事の都合をつけたメンバーが対応しました。11月26日には1979尾102.6 kg(参加8名)、12月2日には928尾47.8kg(6名が交代で参加)を駆除し、12月10日の2265尾146.8 kg(参加14名、新規参加3名含む)をもって、外来魚バスターズ結成以来の通算15トン駆除を達成しました。

 テレビ局の取材意図について、私たちは事前に十分には知らされていませんでした。もとより編集された番組の内容について関与できるものではありません。ワイドショーでは番組の性格上、また外来魚問題に詳しいコメンテーターの不在などにより、外来魚問題を深く扱うには限界があるでしょう。私たちの活動の理念などが正しく伝わってない部分もあったと感じてはいます(これらについては、近々このHPに掲載する予定です)。しかし、「水面下に大量の外来魚がひしめく異常な琵琶湖の姿」と、「外来魚は釣ることによって駆除できる」というふたつの「事実」は、十分に伝わったのではないでしょうか。この事実の前には、「在来魚の減少は外来魚とは無関係である」などの使い古されたバス擁護論など何の説得力も持ちません。事実を報道するために,私たちの要望を聞き入れ,バスの警戒心を煽らぬよう黒っぽい服装に身を包み,できるだけ静かに撮影するなど配慮いただきました撮影スタッフの皆様方に感謝いたします。
 外来魚問題に対してもともと意識の高かった滋賀県などの一部地域を除くと,おそらくブラックバスやブルーギルという名前は知っていても姿を見たことのない人が大多数と思われます。ましてや外来魚の蔓延を実感として持っているのは滋賀県の方でもそう多くないでしょう。バスターズの駆除では1日に2000尾もの外来魚が釣れることはいまや珍しくありませんが,驚嘆する取材陣を見てこの異状を再認識し,外来魚の蔓延という重い真実を広く知らしめることの重要性を感じました。そして現在の琵琶湖には,「バス・ギル大型個体の減少」,それにともなう「在来魚の復活」など,報道すべき価値のある事実がまだたくさんあるのです。もちろんこれらの価値ある事実は、時期を限らず年間を通して自ら駆除を実践してはじめて認識できるのです。

 番組では磯竿にエビ撒き釣りというバスターズ釣法が紹介されていましたが、道具と餌を用意すればただちに大量駆除ができるというわけではありません。技術の習得には個々人の一定の訓練が必要ですし、湖産エビの調達と保管・搬送、駆除ポイントを維持するためのオオカナダモの刈り取りなど、メンバーひとりひとりのこまめな努力の積み重ねに支えられている要素が多くあります。以前よりは少なくなったものの駆除の現場ではバサーによる妨害があります。その中で年間数トンの駆除を何年も続けていくには、外来魚駆除への鉄の意志が必要となります。

 外来魚バスターズの15トンへの歩みは困難を克服する過程でもありました。関西一円を中心に一部東海地方からの琵琶湖への集合は、慣れるまでは努力を要するものでした。また、バス擁護派の執拗な罵倒・中傷や脅迫とも闘わなければなりませんでした。しかし全国の心ある人々の支援と激励を受けて、15トンの駆除を達成できました。今年最後の定例駆除となった12月24日には、4年連続での年間3トン突破ともなりました。外来魚バスターズは次なる20トン駆除に向けて、新たな力強い歩みを開始いたします。


■ 2006年 駆除成果総計
累積駆除回数 110回
累積動員人数 291名
駆除実施拠点(琵琶湖) 14ヶ所

ブラックバス 23807尾 2586.67Kg
ブルーギル 7808尾 628.05Kg
合計 31615尾 3214.72kg

在来魚採捕個体数 14尾
外来魚比率(個体数) 99.956%
 
 
■ 通算 駆除成果総計
通算駆除回数 787回
通算動員人数 1812名
駆除実施拠点(琵琶湖) 45ヶ所

ブラックバス 106291尾
ブルーギル 48568尾
合計 154859尾 15388.72kg

在来魚採捕個体数 166尾
外来魚比率(個体数) 99.893%
 


2006年12月31日

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