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=== 外来魚バスターズ 駆除活動報告 ===
10トン達成!報告

外来魚バスターズは去る2005年4月7日、累計外来魚駆除量10トンを達成いたしました!

 外来魚バスターズは2001年に結成されて以来、季節を問わず駆除活動を行ってきました。今年は結成から4年目の年に当たりますが、その4年をまたずして10トン駆除達成を迎えることになりました。

 結成当初2001年の駆除量は200キロ余りで、まだメンバーも少数でしたが、翌年2002年の早春には湖北でこれまでの最高記録である47キロ/日を大きく超える91キロ/日、そして11月には100キロ超えの110キロ/日をマークして昨年の駆除量を大きく超える1.1トンを達成しました。

 2003年の春は多くの新メンバーと共にロクマル巨大バス群の駆除、また秋には越冬を迎えたバス・ギルの大量駆除で3トンを駆除しました。さらに昨年2004年は3トンを超える3.6トンを駆除して累計8トンとし、10トンにあと2トンと迫っていました。そして今年2005年は湖東の越冬バスの重点的な駆除により一気に駆除量を伸ばし、1日辺り最大300kg前後の駆除量を記録する中、去る4月7日遂に累計10トンを達成することができました。

 さらに、新メンバーの参入や新たな駆除釣法の開発、有力な駆除現場の新規開拓などにより、今年の半期だけで既に3トン駆除を達成しています。年内に4トン超えを達成し、さらに年間5トンの駆除量を目指します。近い将来、年間10トンの駆除量も視野に入れられる状況になって参りました。バスターズは啓蒙活動よりも実質的な駆除成果を重視し、少数精鋭で活動を展開して参りましたが、現状で一人当たり平均で年間約400kgの駆除が目安の成果が生まれています。これは、ごく普通の市民として働き、生活をしている有志メンバーが休暇や余暇時間を利用して達成している数値として、極めて大きな実績をあげているものと自負しています。



● 必殺バスターズ釣法とは

 この累計10トンおよび本年半期の3トン駆除達成にあたって、これまでの活動を振り返りながら市民による外来魚の意義と可能性について考えてみたいと思います。まず外来魚駆除を行うにあたって最初の問題となるのは、一般市民にもバスやギルが駆除できるということです。外来魚バスターズにとっても、どのようにすれば外来魚、とりわけブラックバスを駆除することできるのかが最初に取り組んだ問題でした。

 国内2大外来魚であるブラックバスとブルーギルのうち、ブルーギルについては好奇心が旺盛で雑食性であるために、ミミズなどのありふれた釣りエサを使って、誰でも簡単にたくさん釣れることはすでによく知られていました。休日に家族や友達と釣りに出かけて、ブルーギルが入れ食いで釣れた経験をお持ちの方はたくさんおられると思います。

 一方で、ブラックバスを実際に釣った経験のある方は非常に限られていると思います。当初ブラックバスはルアーで釣る魚であり、また釣るためには経験とテクニックを要する魚であるとアピールされていました。これがバス釣りの醍醐味の根拠とされていました。   

 日本の外来魚問題で最も重要なのはブラックバスです。ブルーギルも大きな問題ではありますが、ブラックバスは魚食性が強く旺盛な繁殖力を持ち大型化する点で、ブルーギルよりも生態系に大きな影響力を持ちます。そして何よりバス釣りのために一部の人間が意図的に放流し、庇護する点で他の外来生物と比べてみても特殊な問題を含んでいました。ブラックバスを駆除することなしに外来魚問題が解決することはありえません。  

 しかし、ブラックバスは釣るのが難しいので、一度繁殖してしまうと駆除など不可能であり、あとは有効利用しかないというのが当時のバス擁護派の論理でした。つまりブラックバスの密放流を止めることなどできないのだから駆除など諦めてバス釣りを受け入れろ、という卑劣な論理が展開されていたのです。

 バスターズはこれに対し、バス釣りの常識を打ち破るべく、試行の中から伝統的な海釣りの手法であるスズキのエビ撒き釣りをバス駆除に応用しました。バスをスズキに見立てて、生きたエビをエサに用いると同時に撒き餌で周囲のバスを集めることで多くのバスを駆除できるのではないかと考えたのです。この釣法は的中し、ブラックバスは生きたエビに旺盛な食欲を示し、簡単にしかも大量にブラックバスを釣ることが可能となりました。

 さらに延べ竿ではなく、大型のバスにも対応できるように磯竿を用いることで60センチを超えるバスの駆除も可能となりました。またバス駆除専用のウキを開発し、警戒心の強いバスにも対応することでより多くのバスを駆除することも可能となりました。ブラックバスは、バサーだけが釣ることのできる『特別な価値のある魚』などではなく、適切な仕掛けさえあれば誰にでも釣ることのできる魚であることがはっきりと示されたのです。こうしてブラックバスが駆除できない魚から駆除できる魚へと変わることで、その後の駆除の論理も大きく変わりました。




● 明らかになった琵琶湖のブラックバスの実態

 生きエビを使った駆除によって明らかになったことは、それまで考えられていたよりも遥かに多数のブラックバスが生息している事実でした。それまでブラックバスはあまり釣れないことや定置網にはブルーギルが多く入っていることから、ブラックバスの生息量はあまり多くはなく、ブルーギルが外来魚の大多数を占めていると報道されていました。しかし事実は違いました。バスターズの今年の4月7日までのデータからこれまでの駆除の内訳を見てみましょう。バス・ギル駆除数合計102882尾のうち、バスは67948尾、ギルは34934尾であり、バスが全体の66%を占めています。

 次に、重量が計測されているバスとギルのデータを元に計算したバス・ギル駆除重量合計は8143.15キロのうち、バスは6280.8キロ、ギルは1682.35キロであり、重量比でもバスが全体の77%を占めています。特に重量比は実際に生態系に影響を及ぼす数値として大きな意味を持ちます。バスターズの駆除データから、数ではバス:ギル=1.95:1、重量比でもバス:ギル=3.73:1となり、数では約2倍、重量比では4倍近くバスが多いことになります。この数字が琵琶湖全体のバス・ギルの比率を示すものではないとしても、ギルが圧倒的に多くバスは少ないという考え方が間違っていることは10トン駆除の統計にはっきりと表れています。

 サンフィッシュ科のブラックバスやブルーギルはコイ科魚類と異なり、後ろに進むことができるので、異常を感じると網の入り口の前で止まって網にかかるのを逃れることができます。ブラックバスはブルーギルよりも警戒心が強いので、定置網にかかりにくい性質があります。また、数の釣れないルアー釣りを目安にしてもバスの実態を知ることはできません。このためにバスの生息数は過少評価されていたわけです。これにはバスの影響力を隠蔽するためのバス擁護派の煽動もありました。

 誰しも、自分の目で直接見たことのないものを、実感をもって理解することはできないものです。生きエビを使った駆除で次々と釣りあがってくるバスを見て、当初は駆除をしている我々でさえも予想以上の多さに驚き、その凄惨な現状を痛感しました。地元の市民の方や、毎日水辺に立っている漁師の方々さえも、駆除された大量のバスを見て皆一様に驚きの声をあげていました。バスがこれほどまでに多くいるなどとは誰も理解していませんでした。生きエビを使った駆除の釣りによって、バスの異常繁殖の実態が明らかになったのです。


● 「釣り」という駆除方法のすぐれた特性

 釣りによって大量のバスを駆除できることが示されたことで、市民による駆除の大きな可能性が見えてきました。外来魚バスターズが駆除した10トンのバス・ギルは、全て釣りによって一匹一匹駆除されたものです。釣りによる外来魚の駆除と聞くと、一見非常に非効率であり、非現実的なものと思えるかもしれません。しかし休日を利用しながらの少数精鋭のボランティアが駆除を積み重ねることで、実質3年あまりで達成した10トンという数字は決して小さなものではありません。バスターズは外来魚が好んで集まる場所を重点的に駆除することで、効率がよく、効果の高い駆除を目指してきました。

 どんな魚にも居心地のよい場所があります。バスもギルも水通しのよい漁港や冬場水温が安定している場所に高密度で集まっていることが多いです。そのような場所を狙って釣り竿で釣り上げていくのですが、この一匹ずつ魚を釣り上げることに実は大きな意味があります。例えば投網では、一投目は多くの魚が取れたとしても、そのポイントは荒れてしまい、それ以上魚を獲ることはできません。さらに、水深のある場所では網が底につく間に魚が逃げてしまい、特に琵琶湖のような場所では役には立ちません。これに対し、ポイントを荒らさずに静かに接近し、そこに外来魚を集めて少し長い期間をかけて駆除する「釣り」という方法は、多くの外来魚を撲滅に近い状況にまで減らすことが可能です。この釣り竿を使った駆除は、定置網などとは異なり誰でも参加することができます。市民が参加できるブラックバスの駆除方法として、釣りは最適のものと言えるでしょう。



● 目に見える駆除の成果と在来生物の復活

 バスターズはブラックバスの大型個体の釣れるポイントで重点的に駆除活動を展開しています。これには二つの理由があります。ひとつには、大型個体の釣れるポイントはバサーにとって魅力的なポイントであることから、その存在価値を消滅させる狙いがあります。かつて人気バス釣りスポットであったポイントの多くは、バスターズの駆除作戦により、見る影もなくバサーの姿を減らしています。バサーにとって魅力的な釣り場を消滅させることが、バス釣り産業に対するもっとも効果的な打撃を与えることになります。

 もうひとつの理由は、とくに産卵期前の大型個体を駆除することにより、その膨大な抱卵数の卵を産卵前に駆除するという狙いがあります。体長40センチの雌のバスは約2万個の卵を、体長50センチ以上なら倍の卵を体内に抱卵しています。1トンの成魚バスを駆除するということは、数億個分以上もの卵および稚魚を駆除するのと同じ効果があるのです。

 では、駆除をどのくらいの期間続ければ効果が現れるのでしょうか。これは駆除を続けていく上でも最も重要な問題といえます。一旦繁殖してしまった外来魚を減らすことは非常に困難なことです。長い期間で考えていかねばならない問題です。バスターズが駆除を行っている琵琶湖をみても、その面積は大変広く、どのくらい外来魚を駆除すればよいのかを知ることは容易ではありません。これだけ広いと全くどうしようもないのではと感じる方も多いと思います。しかしながら、バスターズが駆除の拠点としてきた場所では、すでに外来魚相に大きな変化が見られている場所が多くあります。

 ここで、バスターズが初期から駆除を行ってきた湖西のあるポイントを例に挙げてみたいと思います。このポイントでは当初、船の下にはバスがひしめき合い、それを狙って実に多くのバサーが訪れていました。ここで最初に駆除を行ったときは30センチ台のバスが次々と釣りあがり、在来魚などまったく見られませんでした。水の澄んだ日などは底に敷き詰めたようにバスが泳いでいるのが見えました。この場所からバスがいなくなることなどあるのだろうかと思われるほどの圧倒的な数の外来魚がそこにはいました。それでも始めてみないと何も変わることなどありません、それからしばらくこのポイントで集中的な駆除を行いました。

 その結果、まず釣れる魚のサイズが徐々に小さくなっていき、そして釣れる数も回を追うごとに減少していきました。他の魚と同様に「釣り荒れ」が起こってきたのです。短期間に大きく個体数が減ったことで外来魚の警戒心が高まりスレた状態になり、一時的にエビに反応しなくなった時期もありましたが、そこで一定期間置くとまた警戒心が弱まり、さらに新しい群れが入ってくることでまた釣れだしました。このようなサイクルを繰り返すうちに外来魚は減少し、大型のバスがいなくなった頃から変化の兆候がみられはじめます。

 まずフナなどの中型の在来魚が見られ、次にオイカワなどの小型魚が群れで現れはじめました。外来魚が減ったことで在来魚が姿を現しはじめたのです。その後、周辺から再びバスの群れが多数入ってくると、これらの在来魚は一時的に姿を消していきます。在来魚は明らかにバスに追いやられているのがわかりました。特に大型のバスがいると在来魚は姿を消してしまいます。ここでさらに駆除を続けると、バスのサイズが20センチ代の小型のものばかりになっていきます。こうなると再び在来魚が姿を見せ始めます。ここまでくると最初のバスだらけの状況とは全く違う魚類相に変わっています。そしてさらにはカネヒラなどのタナゴ類までもが姿を見せるようになりました。大型のブラックバスが減少するとフナなどの中型魚が現れるといいましたが、これと同時にブルーギルは突然減少する傾向がみられます。ブルーギルは競争力の強い魚ではなく、藻場の取り合いで同サイズのフナ類には負けてしまうようです。ブルーギルの繁栄はブラックバスが支えているという構造が駆除活動の中で明らかになってきたのです。

 ここまでで説明した『大型ブラックバスの減少』→『外来魚全体の個体数の減少』→『フナなどの中型在来魚の出現』→『オイカワ・ウグイなどの小型在来魚の出現』→『タナゴ類の出現』という変化は例にあげた湖西のポイントだけではなく、駆除の進んでいる他のポイントでもほぼ同様に見られます。駆除の進行の程度を示す一つの指標になるものと思います。


鮒の群れ

小鮒の群れ

カネヒラの群れが戻ってきた

 そして、この湖西のポイントではさらに次の段階が見られています。昨年の秋ですが、この湖西のポイントで外来魚の姿がほぼ見られなくなると同時に、大量のエビ類が集まっているのが確認できました。エビ類はブラックバスの好物であり、ブラックバスの出現で最初に姿を消す最も捕食されやすい生物群ですが、外来魚がいなくなることでこのエビ類までもが復活してきたのです。夜間にこのポイントを見に行きますと、水中の壁一面にスジエビがびっしりとついているのが見えました。外来魚に占拠されていた頃には決してみることのできない光景でした。こうして在来生物が少しずつ回復していく様子を見るのは、駆除を行う者としてもまたとない喜びです。このように、重点的に駆除を行ってきたポイントでは既に一定の効果が現れています。これは市民によるボランティアでも外来魚を殲滅し在来生物を復活させることが可能であることを示す大きな希望であると思います。



ゴリの群れ


● 社会に認知された「バス釣り」の反社会性

 バスターズが駆除活動をはじめてから現在にかけて、ブラックバスを取り巻く社会情勢も激変しました。今年に入ってオオクチバスとコクチバス、ブルーギルは環境省の制定した外来生物を規制する法律−外来生物法−の特定外来生物に指定されたことは記憶に新しいと思います。これによってようやくブラックバスの大きな問題性が法的にも認められることとなりました。バスターズの駆除活動は常にバス擁護派との戦いの中にありました。結成当時はまだバスの問題性は十分に認知されておらず、バス擁護論者が大きく幅をきかせていました。彼らの駆除派への攻撃は犯罪を厭わないものであり、暴力的なものでした。インターネット上においても駆除論を強く唱えるホームページは狂信的な過激バサーらによるサイト荒らしによってことごとく破壊されていきました。バスターズも例外ではなく、これまでもHP上で報告しているように過激バサーらによるサイバーテロによってホームページが何度も破壊されてきた経緯があります。また昼夜を問わない掲示板荒らしにも見舞われていました。こうしたネット荒らしにはバス業者が関わっていたケースも多く認められます。議論の場だけではなく、駆除の現場においても、大勢のバサーらに取り囲まれにらみ合いになることも珍しくありませんでした。フックのついたルアーを投げつけてくるバサーもいました。数年前までは駆除をすること自体が危険を伴う時代でした。こうした過激バサーらの行動は極めて攻撃的で常軌を逸しており、反社会的なカルト思想にも似ていました。バス釣りの振興は、結局は密放流によって支えられた環境破壊を前提にしたものです。そのために、バス釣りのルールの中には自らを正当化し、健全な思考を奪う要素が織り込まれているのでしょう。  

 バス釣りがこれだけ強大な力を持つにいたった背景には、バス釣りの利権にからむ政治的な力があったことが挙げられます。政治的な庇護なしには、当初から批判の強かったバス釣りがこれほど繁栄することもなかったことでしょう。『バス釣り』とは、バス釣り業界や一部の政治家によって作り上げられた、日本の自然を食い物に利益をあげる恐るべき商業システムであったのです。バスターズは、バス擁護派の猛烈な攻撃に対して徹底的な駆除を行うことで鉄の回答としてきました。そうした活動を続ける中で各方面での努力も進み、世論へのブラックバスに対する正しい認識も広まるなかで、バサーの過激な行動は抑制され駆除に賛成する人々も増えていきました。

 こうした中で、先の外来生物法が制定されることとなったのです。これにはブラックバスは当然リストに含まれるものとして考えられていました。ところが、昨年のブラックバスの特定外来生物への選定時には、政治家らの強い圧力によって一時はリストからはずされるという事態がおきました。極めて政治色の強い圧力でした。しかし、最終的には環境大臣をはじめとする関係者の英断によってブラックバスは駆除すべき対象としてリストに含まれることになりました。これは利権のために自然科学的な事実や社会情勢を無視して環境行政に圧力をかけるという現在の腐敗した政治の一面を示すものでしたが、この試みは頓挫し、週刊誌やマスコミにも大きく取り沙汰されたことでバス釣りと悪徳政治家の癒着が世間に露呈することとなりました。バス釣りの持つ反社会的な構造が公になったといえます。

 機を同じくして、琵琶湖のリリ禁裁判も原告棄却の判決が下されました。長い時間を経て、ブラックバスが害魚であることがようやく社会に認められたのです。ネットであれほど激しく駆除論を攻撃していた者たちも、いまやなりを潜めています。利権のためかバス釣りがしたいだけの彼らには守るべき大義はないのです。いまだに一部の御用学者らがバス擁護論を振りかざしていますが、どれも使い古された的外れの論理ばかりで議論の価値もないものです。まともに耳を貸す者はもはやいないことでしょう。





● 駆除作戦は始まったばかり

 バス擁護の論理と構造は瓦解し、世論がブラックバスを害魚と認めた今、ここにきてブラックバスの駆除はようやく始まったといえます。たとえバス釣りが衰退し無くなったとしても、バスが消えて無くなるわけではないのです。バス釣りの残した負の遺産をこれからどう処理していくのかが今後も大きな課題となるでしょう。琵琶湖にも、駆除が行われていない場所はまだまだあります。外来魚バスターズは今年も精鋭メンバーの養成や新たな駆除釣法の開発・技術研鑽など、地道な駆除活動を続けながら、次なる展開について模索してきたいと考えています。今後とも皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。





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