外来魚バスターズでは、大阪府立大学との共同で2003年に志賀町、安曇川町、マキノ町、湖北町、近江八幡、大津などの琵琶湖全域10ヶ所を対象に調査を行い、駆除した多数の個体からランダムにサンプリングしたブラックバス、合計100尾以上のDNA鑑定を行いました。
その結果、調査した全ての地点で、フロリダバスの遺伝子を持つ個体が見出されました。これにより、琵琶湖の全域に‘フロリダバス’もしくは‘フロリダバスとノーザンバスの雑種’が生息していることが明らかとなりました。各調査地点のフロリダバスの出現頻度は、最も低い地点でも1割、最も高い地点では捕獲個体の7割以上にも及びました。これは琵琶湖全域に、フロリダバスに由来する個体が極めて高い割合で生息することを示しています。
今回のDNA鑑定は、ノーザンバスとフロリダバスが明瞭に区別できるミトコンドリアDNAを指標に行いました。ミトコンドリアDNAの遺伝情報は、その母親のみから受け継がれるので、これには父親の遺伝情報は含まれていません。そのため、今回の調査方法では検出できなかった‘フロリダバスを父親に持ちノーザンバスを母親に持つ雑種個体’がいることを考えると、琵琶湖に存在しているフロリダバス由来の個体の割合は、非常に高いものといえます。
ブラックバスはあまり長距離を遊泳する魚ではなく、移動力はあまり高くないことが一般に知られています。これまでに駆除を行ってきた経験から見ても、ブラックバスは同じ場所に居着いて生活する、根魚のような性質があり、短期間に何十キロも離れた地点に広がるような魚ではありません。しかし、今回、琵琶湖の全域に高い頻度でフロリダバスが見られたことは、琵琶湖の広い範囲で大量のフロリダバスが密放流されたことを暗示しています。
このような大規模な密放流を実行するには,個人レベルの私的な放流では到底不可能であり、組織的な放流計画が行われたに違いありません。
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では、今回見出された琵琶湖に多数生息するこのフロリダバスはいったいどこから持ち込まれたものなのでしょうか?フロリダバスが放流されたことが知られている場所に、奈良県の池原ダムがあります。池原ダムでは、1988年にフロリダ州から輸入したとされるフロリダバス1万匹が放流され、現在もフロリダバスが生息することが明らかになっています。
かねてから、大型化するフロリダバスの血を受け継いでいる池原ダムのブラックバスが他の水域へと密放流されており、琵琶湖にも池原ダムのブラックバスが放流されているという噂は絶えませんでした。しかし、これまでにそのような事実を証明するような調査は行われていませんでした。
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そこで、バスターズではその真相を明らかにすべく、今回、琵琶湖だけでなく、池原ダムのブラックバスについても同時に調査を行いました。フロリダバスのなかにも,遺伝子の塩基配列が異なるいくつかのDNAタイプがあります。このタイプの比較をす
れば琵琶湖と池原ダムのフロリダバスとの因果関係が推定できます。そして、琵琶湖と池原ダムで捕獲されたフロリダバスの塩基配列のタイプを比較した結果、琵琶湖のフロリダバス個体群から検出されたDNAタイプは全て池原ダムのフロリダバス個体群にも共通して見られる事実が明らかとなりました!
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これにより、ついに琵琶湖のフロリダバスは池原ダムのフロリダバスと同じ系統群であることが判明しました!!
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今回調査したフロリダバスには全部で10のDNAタイプがありました。この内、琵琶湖のフロリダバスからは4つのDNAタイプが見られ、池原ダムのフロリダバスからは10の全てのDNAタイプが見つかりました。つまり、琵琶湖のフロリダバスから見つかった4つのDNAタイプは全て池原ダムのフロリダバスでも見られ、琵琶湖のフロリダバスは、まぎれもなく池原ダムのフロリダバスに由来していることが示されたのです。今回琵琶湖で見出されたフロリダバスは、1988年に池原ダムにフロリダバスが持ち込まれて以降、琵琶湖へと密放流されたものということになります。琵琶湖でのフロリダバスの密放流は、琵琶湖を取り巻くバス業界やバサーなどの動向から考えて、おそらくここ10年内に活発化したものと思われます。
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今回の調査結果は、フロリダバスの密放流が組織的になされていることを示す決定的な証拠です。一方で、琵琶湖には本来居なかったはずのオオクチバスが数多く生息します。これについても、我々は組織的な密放流無しに、これほど大多数のオオクチバスの存在はありえないと考えています。フロリダバスの密放流に関与した人々が過去にこれらのオオクチバスの密放流に関与しなかったと言い切れるでしょうか?今回の調査結果は、フロリダバスの組織的な密放流だけでなく、過去にオオクチバスの密放流があったことを示唆するものと我々は考えています。
この事実をいま国会審議が行われている特定外来生物被害防止法(有害な外来生物の取り扱いを規制する法律)と関連付けて考えて見ましょう。現在、この法律の規制対象から、オオクチバスを外す動きがあります。この背後には、バス業界やそれと繋がりを持つ一部の政治家らによる働きかけがあります。これらの人々はこれまで、ブラックバスを金儲けの道具として延々と使ってきました。そんなブラックバスをもはや彼らが手放すはずがありません。もし、ここでオオクチバスを規制対象から外すことになると、今回の調査結果が示唆するオオクチバスの密放流に対する歯止めが効かなくなる危険性があります。ブラックバスを規制からはずすことは決して許してはなりません。
外来魚バスターズは、このような動きに反対するとともに、今年も琵琶湖を始めとしてブラックバスの積極的な駆除活動を行ってゆきます。
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関連資料
ブラックバスDNA調査資料一覧へ
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尚、今回決定された琵琶湖と池原ダムのフロリダバスの塩基配列は国際DNAデータバンクで1月上旬頃に公開される予定です。
・National Center for Biotechnology Information
(NCBI) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
・日本DNAデータバンク (DDBJ) http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html
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2005年1月5日 |