京都鴨川上流
Home

=== 外来魚バスターズ 定例駆除活動報告 6月号 ===


2003年 第11回定例駆除 6月8日 安曇川方面漁港 報告担当:だいけん
 6月になり、日中には額に汗のにじむ季節になってきました。しばらくいい天気が続いたので琵琶湖の水位も少し下がっているようです。今回は夏日の中での定例駆除となりました。

 水底に藻のあるポイントでは、小バスや小ギルがたくさん見えます。水面にもたくさん浮いています。10時頃に食いが立ちはじめ、ぽつぽつと釣りあがりました。他のメンバーも少し離れたポイントで大型のバスをしとめています。しかし、しばらくするとバスがエサを追わなくなります。今までは先を争うようににエサを追いかけていた外来魚ですが、今年の春頃から様子が変わってきています。生きエビを使った駆除を重点的に行ってきたため、バスが警戒し、エビを追わなくなってきています。

 昨年の春、ここでは20センチ後半から30センチクラスのバスが次から次へと釣りあがっていました。しかし現在では、小型のバスこそまだまだいますが、大型のバスの個体数が激減しています。異常繁殖で膨れ上がっていたバスの個体数が重点的な駆除によって短期間に大きく減少し、個体密度が急激に低くなった結果、バスの警戒心は極度に高まっていると考えられます。これは駆除の効果が上がっていることを示しています。同様の現象は海釣りにも見られ、はじめはオキアミでどんどん釣れていた魚が、釣り荒れてくると、最後にはオキアミを見て逃げだすようになることがあります。魚も仲間が急激に減ると本能的に危機感を感じるようです。こうなってしまうとしばらくは釣ることが難しくなりますが、一定期間、場を休ませておくとまた警戒心が緩み、再び駆除が可能になります。こうした活動を続ければ、繁殖力の強いバスに対しても壊滅的な打撃を与えられると考えられます。


 この現場では、大型のバスを大量駆除して以来、在来魚、特に小型のものが多く見られるようになった事を以前にも報告しました。今回は水が澄んでいるので、魚の様子をはっきり見ることができました。青白い小魚の群れが見えます。今年になってから見られるようになったオイカワです。オイカワは泳ぐのが速く、しきりに狙ってくるバスから逃げ回っていました。オオクチバスは一般に単独での待ち伏せによる捕食を行いますが、今回は集団行動で在来魚の群れを襲っている様子も見られました。

 水底の藻の影に、20センチ後半ぐらいのギンブナが潜んでいます。ギンブナやヘラブナも今年に入ってから数が急激に増えました。ギンブナの周囲には小型のバスやギルがいますが、捕食されないサイズであるせいか、ギンブナは悠然としています。小型のサイズならバスでもある程度は押しのけることができるようです。他にはケタバス(ハス)の群れも見られます。ケタバスはコイ科には珍しい肉食魚ですが、旋回を繰り返しながら仕掛けの針についているシラサエビに盛んに興味を示しています。何度か食いついたのですが、針にはかかりませんでした。このケタバスも、昔は湖岸で非常にたくさん釣れた魚でした。大バスに追いやられていたケタバスも、ここでは戻ってきたようです。


 魚の泳ぎ方を見てみると、コイ科の在来魚は、動きはすばやく、旋回が上手ですが、その場で停止することはしません。これに比べるとサンフィッシュ科であるブラックバスやブルーギルは、スピードはさほどではありませんが、エサの前で停止したり、胸鰭をうまく使ってバックすることもできます。この動きの違いがあるので、バスやギルは在来魚に比べて網にかかりにくく、特にバスは警戒心が強いのでその傾向がより顕著です。

 しばらく観察していると、向こうから40センチクラスの大きなバスがやってきました。すると、そこにいた在来魚だけでなく、小型のバスやギルも散り散りになって逃げ出していきました。このように大型のバスがいると、それよりもサイズの小さい在来魚は追いやられてしまうことがわかります。逆に言うと、ここでは大型のバスが減ったために、それまで入ってくることができなかった在来魚が戻ってきたのだと考えられます。このように、釣りによって大型のバスを駆除すれば、バスによって占められていた空間を在来魚に開放することが可能であり、在来魚の生物相が多様になるだけでなく、生息場所が増えることで在来魚の個体数増加にも効果があると考えることができます

 岸近くの水底では、バスのつがいが見られました。産卵行動を行っているようです。面白いことに、一方のバスの大きさは40センチ以上ありますが、もう一方は30センチ前後と、つがい同士の大きさが随分と違っていました。バスは、同じようなサイズでつがいを作るのが普通ですが、これも駆除により大型のバスが減ったため、個体群のサイズにアンバランスが生じた結果だと思われます。

 このように継続的に駆除を行ってきたこの現場では、前年、前々年と比べて外来魚の生態に大きな変化が生じています。同時に、在来魚の種類が豊富になるなどの一定の効果も得られています。今年は産卵床を守るバスも積極的に駆除しています。この効果についても今後注目していきたいと思います。


 今回は外来魚の警戒心が強く、厳しい駆除となりましたが、産卵床を守るオスを駆除した他、南湖でも駆除を行い、夕方には大型のバスを駆除しました。今回初参加の牛蔵さんには暑い中、ご奮闘いただきました。ご参加いただいた11名の皆様、ご苦労さまでした。

■ 駆除成果
参加人数 11名
ブラックバス 125尾 19.6kg
ブルーギル       172尾    9.1kg
バス最長寸 55cm 4.1キロ

合計 297尾 28.7kg
▲ページトップ

2003年 第12回定例駆除 - 6月22日 高嶋・南湖方面 報告担当:だいけん
 この時期は、外来魚にとっては、ブルーギルの産卵シーズンにあたります。今回の定例駆除は、前半は北湖で、後半は南湖で駆除を行いました。

 午前中駆除を行ったポイントでは、昨年60センチはあると思われる巨大なバスが目撃され、その大バスが、一般釣り師が掛けた在来魚や、20センチ代のバスを食べようと襲う光景が見られました。ブラックバスは共食いをよくする魚だと言われていますが、20センチ以上もあるバスに何度も食らいつこうとする姿を実際に目の当たりにした時は、強い衝撃を受けました。この北米産の外来魚は、極めて獰猛な性質を持っているといえます。今日も、大きく水がバシャッと跳ねた前を小さなしぶきが跳ねていくのが見えます。ブラックバスが小さな在来魚を追いかけている風景です。藻やヨシなどの水生植物が生えている逃げ場となるものがあるところでは、小さな在来魚でも生き残ることができますが、そのような場所がないところでは、小魚の類はすぐにいなくなってしまいます。


 今日の水は非常に濁っています。水面に浮いてきた小さなバスやギルが時折見えます。
私から離れたところいるメンバーの竿が大きくしなっています。30センチ後半のバスが釣りあがったようです。こちらでも大きな魚が掛かりますが、こちらは36センチもある大きなフナでした。フナは一般に雑食性ですが、大きな物はエビでも良く釣れて来ます。駆除では、釣っても釣ってもバスとギルばかりなので、たまに在来魚の姿が見られるとうれしいものです。


 障害物や船の下に稚魚がたくさん見えます。掬ってみると、ブラックバスの稚魚でした。小さいながら黒い縞があり、ブラックバスの姿をしています。もう親離れしたのか、近くに親魚の姿は見られませんでした。外来魚の個体数を減らすには、稚魚の駆除も非常に有効だと思います。

 後半は南湖で駆除を行いました。ブルーギルの多い南湖では、この時期にもなれば、もうどこ見てもブルーギルだらけのような印象を受けます。前半のポイントとは対称的にこちらの水質は非常に澄んでいて、底の様子もはっきりと見えます。仕掛けを投入すると、無数のギルがエサを取り合っているのが見えます。その中には、ブラックバスの姿も見えます。釣りあがってくるのはブルーギルが大半ですが、ブラックバスの群れが入ってきたときは、バスが釣れます。どんな魚でもそうですが、ブラックバスと同様、ブルーギルにも大物のポイントがあります。26センチもある大ギルが釣れました。ブルーギルは体が平たいので、水圧を受ける分だけ引きが強いですが、このサイズともなると簡単に水面から引き抜くことはできません。


 今回、驚くべき光景を見ることができました。写真のギルは当日釣り上げたものです。このギルは頭部の上側が、おそらく鳥によるものだと思いますが、爪のようなものでえぐられて、頭の上の身がなくなっていました。しかし、このギルは何事もなかったようにエサを追ってきました。恐るべき生命力です。夏場の炎天下の下では、陸にあげた魚はすぐに乾いて死んでしまいますが、バスとギルは非常に強く、特にブルーギルは体の半分が乾ききっているにも関わらず、まだ飛び跳ねたりします。このような魚は、どの日本の魚にも見当たりません。この魚が、繁殖力のみならず、極めて強靭な生命力を持つことを知れば、放流されるとすぐに増えてしまうこともすぐに理解できます。


 朝と夕方には大型のものを含むブラックバスが見られましたが、今回はブルーギルの駆除量が非常に多い一日となりました。午後は時折にわか雨に見舞われる中、38キロあまりの外来魚を駆除しました。一日ご奮闘いただきました9名の皆さんご苦労さまでした。

■ 駆除成果
参加人数 9名
ブラックバス 81尾 10.2kg
ブルーギル       691尾    28.1kg
バス最長寸38cm ギル26cm

合計 772尾 38.3kg
 
在来魚 フナ 36cm
▲ページトップ

コラム − 『ゴミを放るバサー達』 執筆者 : なかやま
 最近,駆除をしている漁港にゴミが目立つようになってきました。

 太いラインやそのパッケージ,針,ちぎれたワーム。その横には空き缶やペットボトル。すべてとは言いませんが,その多くはバス釣りに来た者が残していったものでしょう。このホームページを見てその場に出かけた者がおり,それがゴミの増加につながったのならば,たいへん遺憾なことです。

 捨てられたラインが鳥に絡む,鳥やネコに針が刺さる,フロロカーボンを分解できるバクテリアは存在しない,一部製品の材料にが毒性がある。なぜゴミを捨ててはいけないかについて,しばしばこういった理由が語られます。しかし,ゴミを捨てるな,と言うのに説明が必要であること自体おかしなことです。ゴミを放置して平気で帰るそのこころに問題があると,私は思います。

 私が子供の時には,山や川を汚すとバチがあたる,と躾られました。学生時代に登山や沢登りを始めた時には,来た時よりもきれいにして帰ることを教わりました。ゴミを持ち帰るのはもちろんのこと,米は研がずに炊く,使った食器は洗わずにそれでお茶や水を飲み,トイレットペーパーでぬぐってそれも持ち帰る。もちろん,人が入りこむという行為そのものによって自然を傷つけることは防げません。しかしできるだけ跡を残さないようにするこころがまえを持っていました。
 古来より人は,様々な恵みを与えてくれる自然に対し畏敬の念を抱いてきました。それにより,乱獲や汚染が抑えられ,恵みが保たれてきました。その精神は,自然がレクリエーション資源としても活用されるようになり,生物多様性の持続的活用がキーワードとなった現代でも通じるものだと思います。
 アメリカにおけるブラックバスのキャッチ&リリースは,故郷を代表する生き物であり,レクリエーション(フィッシング)や食料としての資源でもあるこの魚を,大切にまもり持続的に活用するために行われているものです。そこには当然,釣り場をゴミで汚さないということも,同じ理由から行われているはずです。それが,アメリカにおけるバスフィッシングの精神なのでしょう。

 それが日本ではどうか。外来魚であるブラックバスがなぜ日本にこれだけいるのか,この国でのフィッシングはどうあるべきか,そういうことを考えずに,キャッチ&リリースするのが(アメリカでは)決まりだからと,ただそれに従う。日本のバスフィッシングの多くが,精神などない浅薄な模倣,うわべだけのファッションにすぎないということが,釣り場におけるゴミの放置につながっていると思います。精神の伴わない行為は,流行することはあっても長くは続かないでしょう。そんな一過性の流行り遊びのために自然が汚されることは,あってはなりません。

 コンクリートで固められた湖岸は,純粋な自然とは呼べないかもしれません。しかしそんな岸辺にも,たくさんの生き物が暮らしています。なにより,多くの人にとって自然と接することのできる身近な場となっています。この定例駆除報告にも,琵琶湖に暮らすたくさんの生き物の様子が紹介されています。生き物や自然と人との関わりが考察されています。残念ながら多くのバサー達には,バス以外の生き物は見えていないのでしょう。釣っている魚自体,人が放ったものですから,琵琶湖を釣堀とでも思っているのでしょう。だから平気でゴミを放置する,魚をリリースし続ける。我々は,顎に針を掛けた時についた傷のあるバスをたくさん釣り上げてきました。中にはまだ血のにじんでいるものや,折れた針のついたものもいました。彼等が逃がした魚は我々が駆除しています。せめてゴミくらいは持ち帰ってほしいと思うのですが,‘こころない’バサー達にそれを期待するのは無理なのでしょうか。


▲ページトップ
ページのトップヘ
































       ( 昨日:0  今日:0  通算:0 )