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=== 外来魚バスターズ 駆除活動報告 ===
通算駆除重量15トン突破! 2006年外来魚バスターズ活動の記録
 2006年の12月10日、外来魚バスターズによるブラックバス・ブルーギルの駆除重量が結成以来の通算15トンを突破しました。私たちは2001年の結成以来、月2回の定例駆除とメンバー各自の休暇や仕事の合間を利用した個人駆除を継続し、この成果にたどり着きました。定例駆除は雪の降る中も台風の時も、一度も休むことなく行なわれてきました。ここでは、私たち外来魚バスターズの2006年の活動の様子をお伝えします。

  第一部 2006年駆除活動
  第二部 2006年研究活動


■ 第二部 2006年 研究活動

 バスターズにとって2006年は駆除活動以外にも忙しい1年でした。


◆ 生物多様性JAPANシンポジウム「外来種対策の具体例と対策の問題点」
  〜外来魚バスターズ/市民による琵琶湖の生物多様性奪還への戦い〜
 3月18日には、生物多様性JAPANからの依頼を受け、東京で開催されたシンポジウム「外来種対策の具体例と対策の問題点」(PDF)に参加しました。シンポジウムは、外来種対策が進んでいるニュージーランドの事例と、外来生物法の作成にあたられた環境省の方からの法律の概要と今後の展開についての講演、実際に現地で駆除活動にあたっているグループからの発表という構成で行われました。
 バスターズは、「外来魚バスターズ/市民による琵琶湖の生物多様性奪還への戦い」と題して、代表とメンバー1名が発表しました。発表は、昨年に達成した「10トン報告」をベースに、「バスターズが大型個体を重点駆除する3つの理由」、「釣りという駆除方法が持つ優れた特徴6つのポイント」、「バスターズはなぜ少数精鋭を選ぶのか」などといったテーマを加えて構成し、バスターズが駆除に使用する釣り竿や、直前に駆除した50cm級のバスも披露しました。バスターズの講演を参加者のみなさんは興味深く聞いておられ、また52cmのバスを見て目を丸くされていました。発表のインパクトは十分あったと思います。忙しい中、十分な準備時間はなかったのですが発表は成功だったと思います。やはり地道な駆除活動が大きな説得力をもっていると感じました。

 外来種問題の具体的な解決策については、みなそれぞれの立場で模索中であるのが現状のようです。また、種は違っていても実際に駆除を行っている方々からはリアルで切実な悩みを聞くことができました。今回の参加者は多かれ少なかれ現場に関わっている人間ばかりであり、まさに最前線の会合であったと思います。講演会に引き続き行われた懇親会は予想以上に盛り上がり、関係者からは多くの本音も聞けました。みなそれぞれの立場で一定の限界や悩みを抱えているようです。法律ができたからといってそれで現場での問題が解決するわけではなく、いずれの例においてもボランティアなどの有志の積極的な活動が不可欠であることがはっきり見て取れました。

琵琶湖のフロリダバスはどこからいつ放流されたのか?
   密放流の実態に迫る学術研究
 6月25日には、2003年からバスターズが取り組んできた「フロリダバス調査」の成果が、学術論文「琵琶湖におけるオオクチバスフロリダ半島産亜種のミトコンドリアDNA調節領域の多様性と導入起源」として、日本生態学会の第二和文誌である『保全生態学研究』の第11巻第1号に掲載されました。
ラージマウスバス(オオクチバス)には、ノーザンバス(オオクチバス名義タイプ亜種)とフロリダバス(オオクチバスフロリダ半島産亜種)という2つの亜種があります。ノーザンバスは1925年に日本に持ち込まれ、琵琶湖では1974年にはじめて確認されました。一方、フロリダバスは1988年に奈良県の池原ダムに公式放流されましたが、それ以外の水域へ合法的に放流された記録はありません。琵琶湖でフロリダバスが見つかれば、それは密放流が行われた証拠となるのです。

●【調査・研究の経緯】
 琵琶湖にフロリダバスが生息していることは、1996年ごろからすでにバサーの間では周知の事実となっていました。2001年に開始したバスターズの駆除でもフロリダバスの形態的特徴をもつ個体が捕獲されていましたが、それを科学的に実証すべく、2003年の4月、バスターズとして独自の調査に乗り出しました。
 「周知の事実」の通り、湖西北部で最初に捕獲した10尾ほどの検体を用いたDNA鑑定でフロリダバス由来の遺伝子が検出されました。さらに広範な検体の捕獲と分析を行うために、調査地点を西ノ湖を含む琵琶湖全域に広げ、2003年の6月と9月には池原ダムへ遠征しました。バスターズ釣法は、多数のポイントから短期間にサンプルを集めることができるので、このような研究にも大きな威力を発揮しました。
2005年には、3組の研究グループによって、それぞれ琵琶湖、池原ダムとその周辺、および日本の全域を対象にしたフロリダバスを含むオオクチバスの遺伝子解析の研究報告があいついで学術雑誌に発表されました。私たちの論文は順番でいえばその最後となるものでしたが、他グループの研究結果もあわせて検討した結果、「琵琶湖のフロリダバスの起源を探る」研究として報告することができました。
 
●【論文の骨子】
 研究の目的は、琵琶湖に生息するフロリダバスがどこから導入されたのか?を考察することにあります。そこで、琵琶湖(西ノ湖を含む10地点)で捕獲したバスと池原ダムで捕獲したバス、さらに過去に食用にフロリダバスを輸入していた九州の水産業者から取り寄せた食用バスからDNAを抽出し、ある遺伝子(ミトコンドリアDNA調節領域)の塩基配列を調べて、比較しました。

 結果として、まず、琵琶湖のバスは32.7%がフロリダバスあるいはフロリダバスを母親とするノーザンバスとの雑種であり、池原ダムではその割合が82.1%で、水産業者から購入したバスはすべてノーザンバスであることが分かりました。
 次に、塩基配列の違いをもとにDNAのタイプ(ハプロタイプ)を分けたところ、ノーザンバスには3種類、フロリダバスには10種類のハプロタイプが認められました。これらのうち、琵琶湖のフロリダバスにみられた4種類のハプロタイプは、そのすべてが池原ダムからも検出され、琵琶湖にだけみられるハプロタイプがなかった(図2)ことから、琵琶湖のフロリダバスは池原ダムに導入された系統群の一部から構成されていることが分かりました。導入(=密放流)のコストやリスクを考えると、池原ダムに放流するために輸入された種苗が琵琶湖にも放流された可能性が高いと考えられます。

 また、琵琶湖ではフロリダバスが西ノ湖を含む全域に分布していましたが、フロリダバスの割合は南湖で高く、ハプロタイプの構成は場所によって異なり、とくに南湖にしかみられないハプロタイプがありました(図2)。バスは短期間に長距離を移動しないとされていますので、広い琵琶湖の中で北湖と南湖の間にハプロタイプ構成の違いがあったということは、由来の異なるバスの個体群が、北湖や西ノ湖とは別に南湖に放流された可能性を示唆しています。

 池原ダムにフロリダバスが公式放流されたのは1988年ですが、これ以降にも非公式に放流された可能性が指摘されており、私たちの調査結果もそれを支持するものでした。池原ダムでは、外来生物法の施行後、オオクチバスの飼養、保管、運搬等の禁止の緩和を求める要望書(→環境省) (→農水省)を地元漁協が提出していますが、その理由は「新たにバスの成魚を放流していかなければバス釣り場として成り立たない」というものです。これは、これまでにもバスの成魚を放流してきたことを自ら認めるものであり、その中にはフロリダバスも含まれていたことでしょう。琵琶湖では、1997年以前の調査ではフロリダバスの特徴をもつ個体は検出されていませんので、琵琶湖にフロリダバスが密放流されたのは近年に池原ダムに(非公式に)追加放流された時であると考えられます。しかし1997年以前の調査では検体の捕獲場所が琵琶湖のごく一部に限られていますので、1988年の池原ダムでの公式放流時に琵琶湖にもフロリダバスが放流されたことは否定できません。
 以上のことから、琵琶湖に密放流されたフロリダバスは、池原ダムに放流されたものと共通の系統群(種苗など)であり、密放流は複数回行われたと推定されました

 これまでに報告されているバスの研究では、重要な情報が論文中に述べられていない場合や、分析手法がそれぞれに異なるために結果を直接比較できない状況にあります。なにより原産地であるアメリカやバスの一大養殖地である台湾での情報が決定的に不足していることを、この調査・研究を通して実感しました。日本におけるバスの密放流ルートを明らかにするにはこれらの不足を早急に補う必要があります。私たちの論文が関連する研究を触発し、さらに新しい事実が明らかになることを期待します。密放流という反社会的環境破壊行為が白日の下にさらされる時は必ず来ることでしょう。


 
関連資料
ブラックバスDNA調査資料一覧へ


関連リンク
 生物多様性JAPAN  http://www.bdnj.org/
 日本生態学会 http://www.esj.ne.jp/esj/

2006年12月31日
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